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2021/10/22 18:29

こんにちは。




デザイナーの武石です。




今回の【デザイナー’s Blog】は、『たまには白黒はっきりしなくても良い おはなし(後編)』です。




前編では、コレクションでの色展開、その組み立て方、しかし生地によっては必ずしもそのセオリー通りの展開にならない(しない)旨、お伝え致しました。



その例が今回前後編に渡ってご紹介している、超近似2色展開のシャツブルゾンです。


WINDOWPANE SH BLOUSON / ウィンドウペーンシャツブルゾン(GRY)


WINDOWPANE SH BLOUSON / ウィンドウペーンシャツブルゾン(BLK)



先々週は、その背景とデザインのディティールについて語ったところで前編を終えました。



この後編ではこれらの生産を担当した工場さんについてお話しします。



日本の職人技の光るKics Document.の生産背景について知って貰えたら嬉しいなー。
あと、最後にコーディネート例がボーナスTrack的に付いています。


シャツ縫製工場の様子



縫製工場というのはそれぞれ専門分野というのがありまして、一つの工場で何でもかんでも縫えるというわけではありません。

うちの製品も、シャツ・パンツ・カットソー・ジャケット/アウター、それぞれ違う工場で生産されています。

これは一般にはあまり知られていないようで、お客様にお話ししたりすると結構驚かれます。



更に、工場の規模が大きくなるにつれ、内部で分業制となり職人さんの受け持ちのパートが細分化されます。

裁断士さん、衿を専門に縫う職人さん、袖付けを専門にする職人さん、ボタン付け専門の職人さん、といった具合に。



それぞれのパートは難易度が異り、職人さんの経験値によってステップアップしてゆくのだそうです。

ちなみに「丸縫い」といって、1着を裁断から縫い上がりまでまるっと一人で完遂出来る職人さんは、かなり希少で謂わばスーパースターです。



しかしですよ、ふにゃふにゃの生地を型紙通りに切るとか、まっすぐミシンで縫うとか、パーツひとつだって美しく仕上げる事が出来るなんて、私の中ではもうそれだけでスーパースターです。

じゃあなに、丸縫い出来る人は神なのか。ピカーン



それでですね、このシャツブルゾンを縫ってくれた工場も各パートにおけるエキスパートが在籍していて、皆さんそれはそれはきめ細やかな仕事をなさいます。

そして、それを取りまとめる監督も素晴らしい。



監督の目配り気配りが行き届き、職人さんたちとのコミュニケーションが活発な工場は、大抵間違いのない品物が上がってきます。

逆に監督不在又は頼りない仕事をしているケースでは、どうやってもいつまで経っても良いものは上がりません。

それは、もう僭越ながら経験上間違い無し、なのであります。



あと、良い工場の特徴として挙げるならば、一番に思い浮かぶのは電話の回数の多さです。

うちの始業は10:30だと何度伝えても、早朝からバンバン電話がかかってきます。(私は一つの携帯電話だけで仕事も生活もしているので、布団の中に居ようが歯を磨いていようが容赦無く追いかけられるのね)



クールな方だったら、始業時間まで出なきゃいいじゃん、とか思われますよね。

でも大概出ます。明らかに寝起きのカサカサ声しか出ないだろうなという時を除いては。



何故かって、工場から電話がかかってくる時というのは、絶対に何か手が止まる事態が起きている時だからです。

電話を掛けて来る=職人さん相当困ってる というわけです。



業界あるあるですが、そんな時、問い合わせもせずに勝手な判断で進めてしまう工場も多いのです。(これも結構びっくりされる)



全~部商品が出来上がった後に、検品で問題が発覚し、「その時ひと言聞いてくれればこんな問題にはならなかったのに!」ということは実はしょっちゅう起こります。

彼らは何せ途中で手が止まる、先に進めないという状況を嫌います。

1時間に何十枚、1日には何百枚仕上げなければいけないといった生産目標が決まっているし、問い合わせたところでブランド側の担当者がすぐに捕まらないという事態は当然あるわけで、そんな時にミシンの前でぼーっと待っているなんてとてもじゃないけど出来ないよ、というのも理解出来ます。

それでも結果やり直しになる方が余程ロスなのですが・・。



だったら生産に入る前に、不明な点は全て潰してから取り掛かれば、とは私も何万回も思いました。しかしそれがなかなかなようです。

手を進めて初めて分かることもあるしね。



どれだけ緻密であっても指示書や設計図、パターンに書かれていることだけではどうしても現場の職人さんたちに分からないことがあります。

また、そうでなくても不測の事態というのは、必ず起こります。

あれ何だろうね、座敷わらしみたいに「不測の事態わらし」みたいなのが各工場に住んでんじゃないかと思うんだけど。



先ほど、腕の良い職人さんは皆スーパースターだと申しましたが、それでも皆人間。

ええ、当然私もミスをします。それを非難する前に、お互いカバーし合える工場さんとは良い関係が構築出来るし、それはイコール良い製品が上がってくることに直結します。



話を戻すとここの工場は、どんなに小さなことでもその都度必ず連絡をくれるのです。だから最終間違いのないものが納期通りにきちんと上がってくる。
生産期間中は各担当の方からばんばんボールが飛んでくるので、コートの端から端まで全力疾走。一打ずつ全て打ち返していくのは息切れするほど大変です。



でも丁寧に潰していくことが自分自身満足のいく結果にもなると分かっているので、特にこれだけは決して面倒がらず「はい、喜んでー!」の精神でやるのです。



それでね、このシャツブルゾン以外にも「白黒はっきりしなくて良いこと」を、こういった工場や職人さんとのやり取りの中で十数年かけて学びました。



私は性格的には0100白か黒か、というタイプです。

だから若い時は、例えば指示と違うものが上がってきた時「なんで?どうして?ちゃんと指示書(設計図)確認してないの?」と憤慨し、やると言ったら絶対にこの通りに作ってもらわなきゃ困る、と頑固なことを言ってはぶつかることも多かったのです。(ただ、それもひとえに良いものを作りたいという一心だったということは何卒ご理解賜りたい)



でも現場の方々と会話を重ねるにつれ、工場設備の事情や彼らがやり慣れている効率の良い手法、またいちいち言葉にはしないような取るに足りない(と彼らは思っていた)ことも含め色んな背景を知るようになりました。

なんでもいいですよ、ということではなくて「こうでなきゃ」と白黒つけずに要所要所に少し”遊び”を持たせることによって逆に良い提案をもらえたりする機会も増え、指示書の書き方の改良など、解決策を建設的に見出すということも可能になりました。



そうやって信頼関係が築けると「ここの仕様は職人さんにお任せします」ということが私も出来るようになり、お互いにとって良い方向へ進む経験をいくつかしたのです。

性格もあると思うけど、これは年齢や経験を積まないとなかなか身に付かず、これまで一番苦労してきた点かもしれません。



そうそう、よく「デザイナーさんって、デザインする以外何してるの?」と聞かれますが、私の場合はこのように、ほとんどの時間を工場やパタンナー、原材料屋さんとのやりとりに費やしておりまして、気がついたらあっという間にまた次のシーズンが始まっているという日々です。



ブランドの性質や体制によりますが、良いもの提供しようと思ったら、どうしたってこうなるのは自然な流れなんじゃないかなあ。



良いデザイナーはしょっちゅう工場に出入りしている、とよく言われますがその通りだと思います。

この2年間はコロナの影響で全く工場を訪問出来ず(大体断られた笑)、そういった意味では大変ストレスの大きい時間を過ごしました。



コロナが落ち着いたらまず再開したいのはそれかな。



私はデジタルツール大好きだし、時間やコストを省くという意味では割と極限までそれらを使い倒したいタイプですが、

膝を突き合わせて、目を合わせて、最後にはお互い「よろしく」と握手で打ち合わせを終える清々しさを、何かで代用することはちょっと出来ないかな。



そんなこんなを経て無事リリースすることが出来た商品たち。

みんなが力を合わせて作り上げ、世に生まれてきたからにはどうか輝いておくれ。



最後におすすめのコーディネートをご紹介して、この回を終わりたいと思います。




まずはLOOKBOOKでも登場したこちら。



WINDOWPANE SH BLOUSON / ウィンドウペーンシャツブルゾン(GRY)

CTTN STRIPE WING COLLAR SHIRT / 綿ストライプウィングカラーシャツ (BLU)


このようにシャツの上に重ねて、ジャケットやカーディガン、ブルゾンとして着用することが出来ます。
着丈は腰が隠れるくらいで長くないので、このように太めのパンツとも非常にバランスが取り易いです。
うちには無いですが、インナーにお手持ちのプリントTなんか合わせても”抜け”が出来て面白いと思うなぁ。


続きまして、こちらもLOOKBOOKから。

アウターとして使うだけがこの子の役割じゃないんです。
シャツとしての務めも果たすマルチな才能を持ち合わせています。
合わせたパンツは、タック無しでストンと落ちるシューカットパンツ。こんな風にパンツの美しさをも際立たせる、主張しすぎないデザインは、すなわちどんなものとも着合わせ可能というなんとも頼もしい存在なのです。
男子も女子も、こんな風にさらっと着られたらカッコイイよね〜〜。


あとは、前編でもちらっとお見せした、ボリュームハイネックとの合わせ。

実はがっちり計算して作っていますからね、このバランス。
すみません、「たまたま合わせてみました」的な空気感出して。
インナーはこれくらいボリュームあるのも良いですが、大人気定番のボトルネックカットソー(4色展開)ももちろん相性抜群ですよ。


ではまた近いうちに〜。



デザイナー 武石


Who we are ?

生地・ボタン・パターン・縫製・加工、全てに日本の職人技術が宿ったAll Made in Japanブランドとして、自信を持ってプロダクトを提供します。

Kics Document. / KHONOROGICA provides products all made in Japan. All fabrics, buttons, pattern-making, sewing and finishing are made and done using the highest techniques of Japanese craftsmanship.